ものかたり
高い樹の上で葉が小さく波のようにゆれる 語りかけてくる 大丈夫だよ 大丈夫だよ 大丈夫だよ 弱った心に語りかけてくる 弱った時にしか聴こえない聲がある 弱った時にしか見えないものがある ものかたりに耳をすませる ものかたりにつつまれる 樹とわたしが友だちになる...
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Stories
目次「ものかたり」
柚子
二十年後の幸せを願い親は柚子を植える 子どもに黄金色の実りを贈りたい 強いとげで実を守り 固い枝と葉で武装する 実はだれのためだろう 輝きたわわ 初夏 白い花の薫り 柚子のなか径 晩秋 黄金色のアーチ 柚子のなか径 皮はお風呂に 料理にジャムに...
瑠璃縞草
いやな名前で呼ばれても 負けてはいけないよ その名前は あなたではないのだから 『るりしまくさ』 そう呼んであげてください 空からもらった縞の着物 たすき掛けしてガッツポーズ お日様に大きくあいさつ わたし 今日も元気ですよ 春風にあいさつ 縞模様がお似合いです...
いろは紅葉
大きな紅葉の樹が立っている 『柚子のなか路』に立つ風格ある紅葉には 半世紀前の火傷の跡がある まわりが炎に包まれた時 逃げることも出来ずに肌を焼いてしまった それから半世紀 風格あるいろは紅葉は ふかふか緑の絨毯の上に子どもを座らせて...
草いちご
麦わら帽子 長靴 竹かご 長い棒 六月梅雨の晴れ間 母といちご摘み いちご摘みは裏山の中腹 古井戸の跡 焼夷弾の穴 少しずつ進む 虫にも蛇にも気を付けながら 長い棒で草をつつきながら歩く 災いをはらう力 棒はもっている 自然の中に入る時は注意怠りなく 赤く光る草いちご...
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